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【売却】不動産業者の選び方

不動産を売却するとき、複数社から査定書をとり、査定額を見比べて業者選びをするのが近代の正しい手順だと思われている方が多いようです。ある意味では正解ですが、一方で大間違いであるともいえます。

不動産を売りたいと思ったとき誰でも、「1円でも高く売りたい」と思うのは当然です。ご自身の財産である不動産の評価を、1,000 万円と評価した会社と、700 万円と評価した会社を比べたとき、安く評価した会社に対して良いイメージは持ちづらいですよね。

でも、不動産売却の査定評価は高ければ高いほど良いという単純なものではありません。

不動産業者が行う査定とは?

そもそも、不動産業者が行う査定は、ブランド品の買取り査定とは決定的な違いがあります。

ブランド品の買取り査定の場合、買取り業者が正に“買い取る金額”(あなたが受け取ることが出来る金額)を提示します。業者は買い取った金額に修繕費や利益を上乗せして販売します。

対して、不動産の一般的な査定は、売れると思われる金額(買い主が現れるであろう金額)を想定しているに過ぎません。実際は査定ではなく、想定しているだけなのです。売れるか売れないかは解りません!というのが本当の所です。

㊟公的な不動産評価、鑑定は『不動産鑑定士』の独占業務であり不動産屋にはできません。

不動産にも「買取り査定」は存在します。通常の「仲介査定」と同時に「買取り査定」を提示する業者もあるでしょう。この場合の買取査定は、ブランド品の買取査定と同じで、正に受け取れる金額を提示したものですから、高ければ高いほど良いと考えていいでしょう。
但し、買取り査定は、一般的な仲介査定の50%~70%程度の金額なる事が一般的です。

一番高い査定をした業者は信頼できるか?

【以下は一般的仲介査定についてのお話です】
不動産売却の場において不動産業者が先ず取り組まなくてはならない事、それは媒介契約を結ぶ事です。媒介契約とは、売主様と業者の間で『この不動産の売却はあなたにお任せします!』という約束を結ぶ契約です。この契約を結ばなければ売却活動は出来ません。売却活動をすることができなければお金に結び付く事は絶対にないのですから。

では、その依頼(媒介契約)を結ぶためにどうするか!?
悪知恵の働く業者はこう考えるのです。
『この金額で売れるとは思わないけど、ちょっと高めの査定をしておけば媒介契約を結んでくれるだろう‼』

高い査定額を示された売主様は、ついついその気になってその業者に依頼してしまうものです。

残念ながら、そのような理由で高く設定された査定額で売れる事はありません。そして、一定の時間が過ぎ、お客様が不安になったころを見図って現実に売却できそうな金額への値下げの提案をしてくるでしょう。結局は他の会社が提示した低い査定金額と同じことになります。時間だけを無駄にしたという事になるのです。

一括査定サイトの査定競争
一括査定サイトは不動産会社にとっては競争の場です。加盟している不動産会社すべては、何とかして他社を出し抜こうと考えるのは当たり前です。ということは、一括査定サイトを利用して提示された査定金額は、高いものでも安いものでも、すべてが競争の原理の上で作られた数字という事になります。提示された複数の査定書の中で最安値の金額でさえ高すぎる可能性は十分あるのです。

誰を信用するか!?

大切な事は、信頼できる業者を選択することです。簡単ですね!

では、どのように信頼できそうな業者を選ぶのか!

良質な不動産屋はスバ抜けた高額の査定書など出しません。私個人の見解では、一番高い査定をした業者は問答無用で候補から外しても構わないとさえ思います。最初から下心丸見えの業者はです。

逆に一番安い査定書を出した業者にこそ興味を持ってください。馬鹿正直者あるいは、物件に特別な問題を発見したかのどちらかです。膝を突き合わせて話すべき業者は、一番安い査定をした業者かもしれません。

そして、もっとも重要で意外と忘れがちな事があります。それは、売却価格(売り出し価格)の決定権は売主様だけにあるという事です。不動産業者がした査定額で必ず売り出さなければならないというルールは何処にもありません。

以上を踏まえたうえで、とにかく何でも話せそうな担当者、相談しやすそうな担当者を選ぶことです。キレッキレの“デキル営業マン”も良いですが、立板に水の言葉に踊らされて後悔するのは嫌でしょう。じっくり話せて、じっくり聞いてくれて、じっくり教えてくれる担当者を選んでください。

どうしても、提示された査定額では納得できないのであれば、ハッキリとご希望の金額を伝えてください。良心的な不動産屋は、売主様の希望であれば、メリットやデメリットをしっかり説明した上で、査定額を大きく上回る金額での販売にも誠実に対応してくれるでしょう。

買い手側も相場を調べます

当たり前のことですが、不動産を買おうとしている買い手側も相場を調べています。

買い手の相場観と、かけ離れた物件は当然に敬遠されます。わずかな差であれば値引き条件付きで購入希望があるかもしれませんが、かけ離れたものは見向きもしません。売主に対して不信感さえ持つことになるでしょう。

短期間での売却を成功させる為には、根拠となる過去の取引事例(成約価格)と比較して、かけ離れない価格で売り出すことが重要なのです。

先述のとおり、売却までの時間が長くなっても構わないのであれば、売主様が思う通りの金額での売り出しで構いません。

高い値段で売りに出したせいで長期のさらし物状態になってしまう恐れがあります。yahooオークションやメルカリなどで商品を購入したことがある方なら想像がつくと思います。
人気商品が出品されて居るにもかかわらず、誰も入札せず落札されていないと、「なぜ?」と思うでしょう?「送料がべらぼうに高いのか?」「訳アリ商品の説明を見落としたのか?」「出品者の評価が最悪なのか?」なんて心配を巡らせるでしょう?
不動産でも同じことが起きます。買い手側は“不安を感じた物件”は敬遠します。買い客を紹介する不動産業者も、不安を感じる物件をトラブル覚悟で紹介しようとは思いませんから、どうしても慎重になってアラ探しをしてしまいます。相場より高い金額での売り出しには大きなデメリットがあるのです。

大きな業者小さな業者

不動産売却の業者選びで、不動産会社単体の規模や販売力を考えても、実はあまり意味がありません。
というのも、不動産会社は、物件の売却を依頼されたとき「REINS」や「ATBB」という不動産業者専用のデータベースに登録して、日本中の不動産業者に「こんな物件が売り出されていますよっ!」という情報をオープンにします。

そして物件を探しているお客様(買主)の依頼を受けた不動産会社は、そのデータベースを検索して、条件に合った物件をお勧めする!というのが物件探しの業務の流れとなります。

という事は、どんな小さな不動産店でも日本全国の不動産会社と繋がっていて、日本全国の買い客と繋がる事が出来るのです。販売力について大企業と零細企業の差はゼロといっていいのです。

追記:安全な売却のために

例えば、ご自宅の売却をするとき、不動産業者がご自宅を訪問し、外観や内装の状況、設備など必要項目を確認します。その際、必ずこんな事を聞かれます。

  • 1、「雨漏りやシロアリの被害などの不具合はありますか?」
  • 2、「設備や建具で不具合はありますか?」
  • 3、「死亡事故など心理的な問題となりそうな事はありましたか?」
  • 4、「周辺の環境的に、問題と思う所はありますか?」
  • 5、「ご近所との境界、騒音などのトラブルはありますか?」

少しでも、良い(高い)評価をして欲しいと思う売主さんにとって、答えたくない質問ばかりです。特に№3の質問は業者側からしても、たいへん聴きづらい質問です。これらの問題点や不具合を不動産取引では「瑕疵」(かし)といい、売主は買主に対して「告知」しなければならないというルールがあります。それを「告知義務」といいます。

「知らなかったことにしよう」 「言い忘れた事にしよう」は絶対ダメです。売主が知っていたのに、それを伝えなかった場合、売主の責任はいつまで経っても付いて回るのです。仲介業者としても庇いきれません。瑕疵(かし)、欠陥(けっかん)は事前に正直に伝えて、それを踏まえたうえで、状況に適した金額で売却する。これがトラブル回避の鉄則です。

№1、2、3は、告知しなければいけない事が容易に想像できると思いますが、意外と落とし穴となるのは、№4、5です。
たとえば、

  • お隣さんと境界トラブルを抱えていて口論が絶えなかった。
  • お隣さんの子供が深夜でも爆音で音楽を流し近隣でも有名だった。
  • マンションの下階の住人が、わずかな音にも苦情を言うクレーマーだった。
  • 風向きによっては、数キロ離れた工場から悪臭がする。
  • 強い雨が降ると周辺の道路が水浸しになり通行に影響が出る。など

売却する不動産そのものの問題では無いですが、周辺の環境がもたらす“ある意味で欠陥”です。これらも十分、後のトラブルになり得るのです。不動産業者も独自で調査しますが、そこに実際に暮らしていた方でなければ気付かない事もあります。

これは、必ず不動産業者に伝えてください。これにより、査定額が下がるかもしれません。売れづらくなる可能性もあります。しかし、売却して何年も経った後に、あれこれ蒸し返されトラブルになる事は避けられます。

繰り返して何度でもいいます。不都合な事こそ正直に申告することが、不動産取引を成功させる最重要ポイントです!
そしてもう一つ!お客様にとって不都合な事も正直に伝える不動産屋こそが、信頼してもよい不動産屋なのです。