今回は業務上のちょっとした事をお話したいと思います。
以前、県外にお住みの方で、長野の郊外の土地を売却したいというご相談をいただいたときのことです。
価格の打ち合わせも済み、おおまかな調査も完了して、いざ売出しの準備へ――という段階で、私からお客様に「ご本人確認書類のご提示」をお願いしました。運転免許証と住民票の写しをお願いしたのですが、どうやらそれが気に障ったようです。

「あなたが私の免許証を見せろというなら、あなた(=私)の本人確認書類も見せてほしい」と言われてしまいました。
実はその「あなた」とは、私自身、つまり北ながの不動産株式会社の代表の事です。
もちろん、免許証でも住民票でも戸籍謄本でもお見せすることにやぶさかではありません。ですが、このやり取りの時点で、少し残念ではありますが、「このまま進めるのは難しいな」と感じてしまいました。
そこで私は、「今回はご縁がなかったということで、信頼できる地元の不動産屋さんに直接ご相談されるのが良いですよ」とお伝えし、お断りしました。
この「本人確認」という手続き、実はとても大事な意味があります。
それは「依頼者が本当に登記簿上の所有者であるか」「もし名義が違っていても、売却する正当な権限をお持ちなのか」を確認するためのものです。
不動産業者として、真の所有者の意思確認が出来ていない状態で売出しをすることは絶対にできません。
たとえ悪意がなくても、「親の土地を代理で…」「兄弟の名義だけど自分が管理しているから…」というケースは特に慎重な確認が必要です。
つまり、本人確認は「疑っているからする」のではなく、「安心して取引を進めるために欠かせない手続き」なんです。
売主様ご本人を守るためでもあり、買主様を守るためでもあります。過去に遠方から売却依頼いただいたお客様との例では、ご依頼者のご本人確認を頂いた後に、礼儀として私も免許証と宅建士証の写しを送付しています。
ちなみに、弊社は小さな会社で、事務所兼自宅です。
専任の宅地建物取引士も私自身、代表取締役も私です。
いわば「ワンオペ不動産屋」です。
ですが、だからといって決して怪しい存在ではありません(笑)。
宅建業者として長野県に正式に登録されており、「宅建業者名簿」や「専任宅建士名簿」は長野県で公開されています。法人登記簿だって誰でも閲覧できるものです。
お越しいただければ、免許証でも宅建士証でも何でもお見せします。むしろ「顔を見て話す」ことが、信頼関係の第一歩だと思っています。(顔には自信ありませんが。
インターネットやメールだけで完結する時代ですが、不動産の売買はやはり「人と人との取引」です。
お互いの素性をきちんと確認し、気持ちよくスタートできることが、後々の安心につながります。
どうか売却をご検討の皆さま、最初に本人確認を求められても、「疑われている」と受け取らず、「安心のための第一歩」とご理解くださいね。