先日、ご実家の売却相談にいらしたお客様のお話です。いつもの通り、不動産調査を行い、慎重に査定額を算出しました。
私は駆け引きや自己利益への誘導が嫌いな性格ですので、買取り査定を含め、複数の選択肢と諸経費を差し引いた「手残り金額」をすべてオープンにして4案を提示しました。

通常、売主様は「手残り金額が一番多い方法」か「一番手っ取り早い方法」のどちらかを選ばれます。しかし、今回のお客様は全く違う選択をされました。
提示した中で「一番査定額の低い買取り業者」を選ばれたとき、私は正直、顔には出しませんでしたが驚きました。しかし、お客様の言葉でその理由を知り、胸が締め付けられる思いがしました。
『この先どうなるのかを考えると、この事業者(一番安い事業者)が気になる』と。
お客様は、単に条件の良い業者を探していたわけではありませんでした。自分が育った実家が無機質に「壊される」のではなく「誰かに大切に使われ、命が吹きこまれる」ことを心の中で願っていたのかもしれません。
売主様が今回選ばれた業者は、私が査定依頼をした際に、偶然にも大まかなリフォーム案を告げてくれました。その案を売主様への説明にちょっとだけ付け加えてみただけだったのですが。
まだ、最終決定された訳ではありませんが、私が想像していた結論は大外れとなったのです。
お客様とお話しているうちに、私は少し自分が恥ずかしい気分になりました。不動産業界に長くいると、どうしても「いかに高く売るか」「いかに効率的に売るか」という価格勝負の思考に陥りがちです。しかし、空き家売却は単なる資産の処分ではありません。そこには、その家の歴史や思い出、そして「再生してほしい」という売主様の祈りにも似た感情が込められている場合があるんです。
「思い入れ」というものは、金銭ではどうにも測れない。 今回のお客様に、私は不動産屋として一番大切なことを教わりました。
単に物件を数字で処理するのではなく、売主様の「想い」に寄り添い、その家と街並みにとって最善の未来を一緒に探す。これからもそんな丁寧な仕事を続けていきたいと思いました。




