「ちょっと相談があるんだけど……」と、ご来店いただいたお客様。
お話を伺うと、ご親族から相続したという調整区域内の農地のことで悩まれているとのこと。 広さは80坪ほど。農地としてはかなりコンパクトなサイズです。しかし、現在はすっかり手が入らず荒れ地になっており、周りの農地の様子を伺うと、どうやら周囲も耕作していない様子……。

「国が引き取ってくれる制度(相続土地国庫帰属制度)があるって聞いて調べたんですよ」
お客様はため息をつきながら続けます。
「でもね、境界をはっきり確定させなきゃいけないし、構造物や残置物の撤去費用なんかも必要で……。とても現実的じゃないんです」
ちなみに、その土地にかかる固定資産税は、年間でタバコ1箱分くらい(数百円程度)。 「固定資産税の支払い自体は、正直痛くも痒くもないんです。でもね……このまま何の解決もしないまま、子どもたちの世代にバトンタッチすることだけは絶対に避けたいんですよ」
そのお気持ち、本当によく分かります。 「タバコ1箱分なら放置でいいか」と割り切れないのが、親心というものですよね。
それと・・・あまり荒らしておくと周囲の地主さんから【草刈り】の要請のご連絡が来るそうです。これが一番辛いらしいです。
「隣の人に買ってもらう」も、実は壁だらけ
「じゃあ、隣の農家さんに『タバコ代程度でいいから引き取って!なんなら只で!』とお願いすれば?」
……と、普通なら考えますよね。しかし、ここにも大きな壁が立ちはだかります。
まず、農地を売買・贈与するには「農地法」という厳しいルールのハードルを越えなければなりません。さらに、所有権を移すための不動産登記が必要ですし、後々のトラブルを防ぐために売買契約書や贈与契約書を作るとなると、専門家への費用や実費が発生します。
土地そのものはタバコ1箱分なのに、手放すための「手続き費用」や「人件費」の方が遥かに高くついてしまう。これでは、隣の方だって「タバコ1箱分の土地のためにそこまでお金と手間をかけたくないよ」となってしまうのが現実です。
正直に言います。私にも「完璧な正解」が出せませんでした
不動産のプロとして、何とか力になりたい。 知恵を絞り、あれこれ可能性を探りましたが……正直にお伝えすると、このご相談には「これだ!」という即効性のある良いアドバイスができませんでした。
「こうすれば一発で解決しますよ!」と調子の良いことを言うのは簡単ですが、現実の制度やコストの壁は甘くありません。お客様の「子どもに負の遺産を残したくない」という切実なお気持ちを受け止めるからこそ、安易な答えを出すことができませんでした。
誰もが抱える「未来の課題」
今回のご相談は、決して特別なケースではありません。 これから先、日本中で同じように「税金は安いけれど、手放すこともできず、子ども世代へ引き継ぎたくない土地」の問題が、どんどん表面化してくるはずです。
「一体どうすればいいんだろうねぇ……」と、お客様と一緒に頭を抱えてしまった今回のご相談。 明確な解決策をお示しできず、不甲斐ない気持ちもありましたが、こうした「現場のリアルな悩み」を真摯に受け止め、地域の皆様と一緒に悩み、考えていくことこそが、街の不動産屋の役目なのかもしれないと感じています。
もし「うちにも似たような土地があるよ」「こういう発想はどうだろう?」といったアイデアやご経験があれば、ぜひお気軽にお声がけくださいね。
今日もお読みいただき、ありがとうございました!




